すべての「いのち」のために

日本SRGM連盟代表・日本アニマルライツ連盟理事・日本優生思想研究所研究員の日野智貴のブログです。いのちに線引きする「優生思想」に断固反対!(記事内容は所属団体の公式見解とは無関係の個人的見解です)

台湾の国際法上の帰属先について


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戦前に日本が領有し、現在、中国がその領有権を主張している地域としては、尖閣諸島、台湾、澎湖諸島西沙諸島南沙諸島、の、五つの地域が挙げられる。

このうち、尖閣を除くすべての地域は、大日本帝国がかつて「台湾の一部」として領有していた地域であり、尖閣諸島についても、中華人民共和国及び「台北政府」*1は「尖閣諸島は中国台湾省の一部である」と主張していることから、台湾の領有権を巡る法的議論が、極めて重要であることがわかる。

さて、それでは、中華人民共和国及び「台北政府」はどのように主張しているのかを見ていこう。

まず、『カイロ宣言』が主な根拠になっている。1943年に中華民国、米国、英国の3国はカイロ宣言を発表し、「右同盟國ノ目的ハ日本國ヨリ千九百十四年ノ第一次世界戰爭ノ開始以後ニ於テ日本國カ奪取シ又ハ占領シタル太平洋ニ於ケル一切ノ島嶼ヲ剥奪スルコト並ニ滿洲、臺灣及澎湖島ノ如キ日本國カ清國人ヨリ盗取シタル一切ノ地域ヲ中華民國ニ返還スルコトニ在リ」とした。

「清國人ヨリ盗取」とは、日本が非合法的に編入したという意味であり、よって台湾は、『サンフランシスコ平和条約』その他の条約の規定によらずとも、中華民国に返還されなければならない。また、日本も『ポツダム宣言』第八条によって、『カイロ宣言』を受け入れているのであるから、日本が台湾を「清國人ヨリ盗取」したことを認めている、と解釈するわけである。

アメリカの、ローズベルト大統領自身、1943年12月24日にカイロ宣言の原則に触れて、「これらの原則は簡単で基本的なものであり、盗んだ財産は本来の主人に返還することが含まれる」と述べているようである。

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しかし、この主張には、致命的な欠点が存在する。そもそも、『カイロ宣言』は、宣言として無効である。

まず、この文書は「会議公報」,「カイロ公報」と呼ばれており、竹下義朗先生の言うとおり、『カイロ公報』と呼ぶべき代物である。その証拠に、この文書に、米・中・英のどの国の者も署名していない。単なる「草稿」にすぎないのである。

よって、中華民国及び「台北政府」の主張には、十分な根拠があるとは言えない。

しかし、今だに、中華人民共和国や日本の一部の識者は、『日中共同宣言』に基づいて、「台湾は中国に帰属する」と主張している。

だが、『日中共同宣言』には以下の条項があるのみである。

二 日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。
中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。

ポツダム宣言』第八条では、

八 「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルベク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルベシ

とあるが、そもそも、『カイロ宣言』は無効であり、ここで有効なのは、日本政府が「日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルベシ」という立場を「堅持」することだけである。明確に「台湾は中国領」と承認したわけではない。

次に、「台北政府」は『日華平和条約』を根拠に台湾の領有権を主張しているが、その内容は、

第二条 日本国は、千九百五十一年九月八日にアメリカ合衆国のサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約(以下「サン・フランシスコ条約」という。)第二条に基き、台湾及び澎湖諸島並びに新南群島及び西沙群島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄したことが承認される。

というものであり、『サンフランシスコ平和条約』が前提となっている。また、同条約第十条及び同条約議定書の規定には、台湾を中華民国の施政下に置くことを前提とした条項がある。しかし、「台北政府」は『日中共同宣言』の規定により、「合法政府」とは認められない。『日中共同宣言』は合法的に締結された有効な条約であり、従って、『日華平和条約』は非合法的な、無効な条約である。

以上によって、中華人民共和国及び「台北政府」は、台湾に関する領有権を有しない。

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それで問題となるのは、台湾はどこに帰属するのか、という問題である。これについては、『サンフランシスコ平和条約』の解釈により、台湾は日本が清より割譲されたものであるから、やはり、中国に返すべきだ、という主張も存在する。また、台湾独立派は、台湾の帰属は台湾人民が決めるべきであるとする。

サンフランシスコ平和条約』の第二条には、こうある。

第二条(a) 日本国は、朝鮮の独立を承認して、済洲島、巨文島及び欝陵島を含む朝鮮に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。
(b) 日本国は、台湾及び澎湖諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。
(c) 日本国は、千島列島並びに日本国が千九百五年九月五日のポーツマス条約の結果として主権を獲得した樺太の一部及びこれに近接する諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。
(d) 日本国は、国際連盟委任統治制度に関連するすべての権利、権原及び請求権を放棄し、且つ、以前に日本国の委任統治の下にあつた太平洋の諸島に信託統治制度を及ぼす千九百四十七年四月二日の国際連合安全保障理事会の行動を受諾する。
(e) 日本国は、日本国民の活動に由来するか又は他に由来するかを問わず、南極地域のいずれの部分に対する権利若しくは権原又はいずれの部分に関する利益についても、すべての請求権を放棄する。
(f) 日本国は、新南群島及び西沙群島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。

この『サンフランシスコ平和条約』には、ソ連中華人民共和国及び「台北政府」、朝鮮(大韓民国)は、調印しなかった。その、調印しなかった国の扱いについては、第二十五条で定められている。

第二十五条 この条約の適用上、連合国とは、日本国と戦争していた国又は以前に第二十三条に列記する国の領域の一部をなしていたものをいう。但し、各場合に当該国がこの条約に署名し且つこれを批准したことを条件とする。第二十一条の規定を留保して、この条約は、ここに定義された連合国の一国でないいずれの国に対しても、いかなる権利、権原又は利益も与えるものではない。また、日本国のいかなる権利、権原及び利益も、この条約のいかなる規定によつても前記のとおり定義された連合国の一国でない国のために減損され、又は害されるものとみなしてはならない。(傍線、引用者)

つまり、原則として、調印しなかった国のために、「日本国のいかなる権利、権原及び利益も」この条約の規定によって「減損され、又は害されるものとみなしてはならない」のであるが、例外として第二十一条の規定が存在する。

その、第二十一条の規定は、こうなっている。

第二十一条 この条約の第二十五条の規定にかかわらず、中国は、第十条及び第十四条(a)2の利益を受ける権利を有し、朝鮮は、この条約の第二条、第四条、第九条及び第十二条の利益を受ける権利を有する。

つまり、朝鮮は、第二条の規定によって、利益を得ることができる。だから、朝鮮は独立することができた。

一方、中国は、「第十条及び第十四条(a)2の利益を受ける権利」においてのみ、例外となっている。朝鮮のように、「第二条」が明記されているわけではない。

第十条は、北清事変で日本が得た権益などの放棄であり、第十四条(a)2は、
  (a) 日本国及び日本国民
  (b) 日本国又は日本国民の代理者又は代行者 並びに
  (c) 日本国又は日本国民が所有し、又は支配した団体
の財産を差し押さえる権利(賠償請求権の一種)である。

これらは、すべて台湾の領有権には、関係ない。従って、『サンフランシスコ平和条約』第二条は第二十五条の規定により、台湾を中国に割譲することを認めたものではなく、また、そのために、日本の利益が減損されるものでもない。

つまり、日本は、台湾を放棄する必要はないのである。なぜなら、『サンフランシスコ平和条約』に署名した国以外の国のために日本の利益が減損されない以上、『サンフランシスコ平和条約』に署名・批准した国が台湾の領有権を主張していない現在において、日本は台湾の領有権を言う「利益」を失う必要はないからだ。

一方で、台湾の主権は、台湾人民に帰属するという立場もある。

それは、誤りである。

国土は国家の所有物であり、国を持たない台湾人民に帰属されることはない。また、仮に将来的に台湾が独立したとしても、そもそも台湾は連合国ですらないのであるから、『サンフランシスコ平和条約』に署名する権利すら持たず、したがって、批准もできない。そのために日本の利益は減損されない。

よって、台湾は日本に帰属する。*2


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*1:現在の台湾を実効支配しているのは、中華民国の後継を名乗る政権であって、台湾で実効的に施行されている憲法は、『中華民国憲法』である。また、多くの台湾住民がその事実に対して意義がないことは、現在の台湾の与党が「中国国民党」であることからも明らかである。しかし、わが国は『日中共同宣言』第二条「日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。」の規定により、中華民国を合法的な政府とは認めていない。また、『日中共同宣言』及び『日中平和友好条約』は、合法的に締結された条約であり、この規定は有効である。従って、現在台湾を支配している政府は非合法的な政権であって、ここでは「台北政府」と呼ぶ。

*2:日本は中華人民共和国を、中国における唯一の合法政府として承認した。このことから、台湾は中国の一部なので、台湾の領有権は中華人民共和国にあるのではないか、とする立場も存在する。しかし、台湾を日本に割譲した清王朝は、中国ではなく、満洲の王朝であって、さらに、清は「漢地(中国)」と「台湾」を明確に区別して統治していた。一例をあげると、漢民族の台湾への渡航は原則として禁止されていた。台湾が中国の一部であるのならば、中国人が台湾に行けないはずがない。(密入航はあった)さらにいうと、中国の中央政府が台湾を有効支配したことは、存在しない。(明の遺臣である日系中国人による亡命政権には皇帝もおらず中央政府ではないし、「台北政府」は合法政府ではない)だから、そのような立場は成立しない。