すべての「いのち」のために

日本SRGM連盟代表・日本アニマルライツ連盟理事・日本優生思想研究所研究員の日野智貴のブログです。いのちに線引きする「優生思想」に断固反対!(記事内容は所属団体の公式見解とは無関係の個人的見解です)

「戦争参加法制」強行成立に思う――立憲主義が民主主義の暴力に敗れた日

自衛権とは、正当防衛権である。しかし、その範囲は、時と場合と場所によって、変わるものである。

 

例えば、我が国においては、恋人が暴漢に襲われた際、その防寒を殴り倒すのは「正当防衛」である。しかし、その暴漢が素手で恋人を襲っているにもかかわらず、ナイフでその暴漢を刺殺した場合、損傷致死又は殺人に問われる。(私ならば刑務所行きを覚悟でそいつを殺すだろうが、それは正義に反することなのだ。)

アメリカだと、住居の敷地に入った不審者が「フリーズ!」と言って止まらなかったことを理由に打ち殺しても、「正当防衛」になることがある。(殺した方に民事賠償が請求されることはある。)

 

国際社会では、自国と密接な関係にある他国が攻撃された場合、その他国防衛のために武力を行使したり、交戦権を発動することは「正当防衛」だ。

 

だが、我が国には『日本国憲法』が存在する。『日本国憲法』第9条第2項には、次のように記されている。

 

日本国憲法』第9条第2項

前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。



これをよむと、「陸海空軍その他の戦力の不保持」の部分には「前項の目的を達するため」という「限定詞」がある。解釈次第では、戦力の保持も認められうる。つまり、自衛隊が合憲である、という解釈も成り立つのだ。

 

ところが、ところが・・・・・後段部分の「国の交戦権は、これを認めない」の部分には、そのような限定詞がない。つまり、正当防衛のためであっても、交戦権を発動できないのである。

 

例えば、在日米軍基地の共同防衛等は集団的自衛権の行使に当たるが、「交戦権の発動」ではないので、『日本国憲法』には違反しない。しかし、中国海軍が尖閣諸島を占拠した際、日本が報復に中国の海軍基地を攻撃することは、「交戦権の発動」であって、『日本国憲法』に明白に違反する。

 

そのような規定はおかしい、という方もおられるであろう。それは、その通りである。

 

複数の政治家は「純粋法理上は『日本国憲法』は無効である」と主張している。

但し、私は占領憲法について、「完全無効論」の立場は取らない。南出喜久治先生の「『日本国憲法』は憲法典としては無効であるが、講和条約としては有効である」という「憲法無効論」の立場に立つ。

この場合、『日本国憲法』は講和条約なので、同じ講和条約である『サンフランシスコ平和条約』のほうが『日本国憲法』よりも優先される。『日本国憲法』では禁じられた交戦権の発動も、『サンフランシスコ平和条約』で認められた個別的自衛権または集団的自衛権の行使や、国連安保理決議または平和のための結集決議によって行われる武力行使への参加の範囲内であれば、無制限に認められる。

 

だが、『日本国憲法』が無効との議論は意味がない、といったのは安倍晋三自身である。『日本国憲法』が憲法典として有効であると主張する安倍政権が『日本国憲法』を無視することに私は反対しているのである。

 

立憲主義と民主主義が正面から対立する時代が、ついに、やってきた。

いや、こうした時代は、すでに始まっていた、と言ってもよい。2010年6月2日、菅直人が総理大臣に就任して以来、この国には「民主主義の暴力」の時代が到来した。

「民主主義の暴力」の最終段階が、ファシズム体制の樹立と、社会民主主義的平和革命の成立の、いずれかである。

私にとって、ファシズムとは、「国家主義優生学国民主権原理を目的、名目又は手段とする反自由主義・非立憲主義的なプロレタリア独裁体制」である。これに該当するのは、ナチスドイツ、イタリアのファシスト党政権、戦前日本の一時期、昔の中南米諸国である。

安倍晋三は、ファシストにはなれない。労働者の権利を破壊しているからだ。しかし、その手法はファシズム的である。

国家主義優生学国民主権原理を目的、名目又は手段とする反自由主義・非立憲主義的」政治を、安倍はまさに実行している。そして、このような政治自体は、民主主義とは矛盾しない。

「戦争参加法制」は、「民意」を受けて選挙で圧勝した、安倍自民党によって強行採決された。この手続き自体は、間接民主制の必然である。

しかし、この瞬間、日本は民主的手続きによって立憲主義を放棄した。

保守派の人間――私を含む――は、「憲法を守れ!」というと、何か、とてつもなく悪いことをしているような感覚に襲われる。その「感情」を、安倍は利用した。「法理」よりも「感情」の政治を行った。

 

そもそも、今回の「戦争参加法制」は、アメリカの侵略戦争に参加することを拒否するための歯止めが存在しない。イラク戦争での後方支援については、高裁レベルでは違憲判決が出ているのであるが、安倍にはそのあたりのことが理解できているのであろうか?

 

イスラム国」事変以来、我が国は、かつての大東亜戦争を忘れたかのように、アメリカによる「イスラム国」への空爆に拍手喝采し、左翼マスコミまでもが後藤健二さん殺害への報復を主張し、そして、今回は、こうしたアメリカの行為を後方支援するという。

 

一方で、日本を守るために、維新の党が提出した『領域警部法』については、廃案にした。「日本を守るため」という、安倍の掛け声が嘘であることは、このこと一つをとっても明らかであろう。

 

今からでも遅くはない。

 

「戦争参加法制」の廃止と『領域警備法』の制定に向けて、我々清の愛国者(≠安倍信者)は、邁進すべきである。