すべての「いのち」のために

日本SRGM連盟代表・日本アニマルライツ連盟理事・日本優生思想研究所研究員の日野智貴のブログです。いのちに線引きする「優生思想」に断固反対!(記事内容は所属団体の公式見解とは無関係の個人的見解です)

性的指向と恋愛指向の区別を「ごく少数の意見」として排除しようするwikipediaの一部編集者

 Wikipediaにおいて性的指向と恋愛指向の区別を「少数意見」であるという理由で削除している編集者が複数存在し、その内1人は「ノート:恋愛的指向」のページで公式に削除を提案しています。

 私にはWikipediaの編集方針など特に関係は無いのですが、その中にはアセクシャルやアロマンティックと言ったSRGM当事者の声を封殺する論理が含まれていたので、取り上げさせていただきたいと思います。

削除された記述とは?

 さて、削除されようとしている記述は、なんと私の団体についての記述でした。(笑)こうして議論になること自体、光栄なことです。

一方、性的指向と恋愛指向の混同に反対する当事者も存在する。2021年1月4日アセクシャルやアロマンティックを含む性・恋愛・ジェンダー少数者の当事者団体である日本SRGM連盟は「性的指向と恋愛指向の混同は人権侵害である」とする声明を出した。日本SRGM連盟は法務省性的指向を「人の恋愛・性愛がどういう対象に向かうのかを示す概念」としていることについて「広義の性的少数者への人権侵害を助長しかねない」としている。また、法務省性的指向の具体例を異性愛・同性愛・両性愛に限定していることについて「Aceスペクトラムの人たちについては、その存在すら認めていない」と非難している。同様の声明は従来のLGBT団体からは出されていなかったという。

 この既述なのですが、厳密にはいくつか問題点があります。

 これだけ見ると恰も日本SRGM連盟だけが性的指向と恋愛指向の区別を求めているかのようですが、実際には性的指向と恋愛指向の区別は多くのSRGM当事者が求めていることです。

 「同様の声明は従来のLGBT団体からは出されていなかったという」と言うのは、恐らくは『選報日本』の次の記事を出典としたものでしょう。

www.sejp.net

  この記事自体、「性欲を持たない人」と言ったようなやや不適切な表記が使われていますが、件の声明を黙殺するメディアが多い中、アセクシャルやアロマンティックの権利を誠実に考えてくださっているメディアであると言えるので、この点では文句を言っていません。

 さて、ここで同様の声明が他に例が無いというのは、公的機関等に対して抗議する声明が他に存在しないという意味であり、性的指向と恋愛指向の区別を求める意見自体は他にもありました。今このブログを読んでくださっているWikipedia編集者の方がいればその点を踏まえた加筆をして下されれば幸いです。

削除使用している理由がなんと「支持者がごく少数」!?

 さて、私が驚いたのが、その削除理由です。「ぽぽか」という編集者が次の理由で削除するべきであると提案しているのです。

    • 恋愛的魅力を感じる性別を「性的指向」とする定義が多数意見、「恋愛的指向」とする定義が少数意見であるため、「恋愛的指向」を自明視する記述は中立性を欠く
    • 性的指向(多数意見)」が性的魅力と恋愛的魅力を区別しているのは定義に「恋愛や性愛」と併記されていることから明らかであり、両者に同じ用語を割り当てることを「混同」と呼ぶことは実態に反しているうえ、さらに用語そのものが誤りであるかのような印象を与える
    • 性的魅力を感じる性別と恋愛的魅力を感じる性別に同じ用語を割り当てることが人権侵害であるとの意見は支持者がごく少数で、たとえ出典を明記したとしても「適当な重み付け」に反する

     

 そう、この「ぽぽか」さんは少数意見であるということを強調して削除しようとしているのです。

性的指向と恋愛指向の区別は本当に少数意見?

 そもそも、性的指向と恋愛指向の区別を求める意見は当事者の間では決して少数ではありません。日本SRGM連盟が目立っているのは当団体が約170人のメンバーを抱える、比較的規模の大きな当事者団体であるからですが、日本SRGM連盟以外にも性的指向と恋愛指向の区別をしている当事者関係のサイトを上げると次のようなものが出てきます。

jobrainbow.jp 

www.nijikou.com

nijikou.hatenablog.jp

jibun-rashiku.jp

marshmallow-qa.com

itashitakunai.com

 このように性的指向と恋愛指向の区別は多数の当事者によって主張されているものであり、こうした当事者の声を受けて当事者の全会一致で出されたのが、日本SRGM連盟の件の声明です。

acecommunitywestjapan.amebaownd.com

 こうした当事者の声が仮に「少数意見」だというのであれば、それは当事者時代が少数派であるからです。この「ぽぽか」さんのロジックは当事者の声を封殺するものであると言えます。

削除提案者はWikipediaでブロックされている編集者?

 さて、これについて驚いたのは、この「ぽぽか」さんという方、実はwikipediaで本当はブロックされている編集者であるということです。

 彼の利用者ページにはこう書かれてあります。

221.185.249.61(2021年6月30日~2021年7月1日)です。--ぽぽか会話) 2021年9月27日 (月) 13:13 (UTC)

 では、この「221.185.249.61」とは何者か、というと、まさに彼が投稿していた最終日である「2021年7月1日」から現在進行形でブロックされている編集者でした。

 2021年7月1日 (木) 11:05 ネイ 会話 投稿記録 が 221.185.249.61 会話 を1年ブロックしました (アカウント作成も禁止) (Blocked proxy: Vpngate VPN)

 ここには「アカウント作成も禁止」と書かれていますが、禁止されているアカウント作成をして投稿を繰り返すのは、Wikipediaの方針としてはどうなのでしょうか?

 しかも、彼の投稿は全て(例外なく)性的指向と恋愛指向とを区別している既述の削除に関するものです。

  その中には日本SRGM連盟とは全く無関係の団体の記述をも削除しているものまであり、彼が性的指向と恋愛指向の区別を記述することそのものを妨害しようとしていることは明白です。

 なお、その記述は別の編集者により復帰されましたが、ぽぽかさんは再度の削除を断行しています。ここまで執拗に削除を行うのは、少し異常です。余程性的指向と恋愛指向の区別が広まることが都合悪いのでしょうか?

 ぽぽかさんが他の記事の編集をしていないところを見ると、かなりこの分野のみに執念があることが判りますね。

削除提案者も「当事者の間では一般的」と認めている

 さらに驚いたのは、この削除提案者のぽぽかさん自身が、次のように記しているということです。

法務省が恋愛と性愛を個別に挙げているのは両者が一般的に区別されるからでしょう。むしろアセクシャルおよびアロマンティック当事者の間では恋愛的指向を使用するほうが一般的であり、使用しない人が不当な非難を受けかねないほどです。恋愛的指向の使用を主張する際には、そのような非難とならないよう表現に細心の注意を払っていただきたいです。

 仰られる通りです。私の団体の声明も当事者の間では一般的な考え方です。

 逆に、そのような当事者の間では一般的な考え方をどうして「ごく少数」の意見として削除しようとしているのか、理解に苦しみます。

 ぽぽかさんには当事者の意見を無視するべきだという信念があるのでしょうか?そのような信念をお持ちなのであれば、アセクシャルやアロマンティックを始めとするSRGM当事者にとっては看過できない話です。