すべての「いのち」のために

日本SRGM連盟代表・日本アニマルライツ連盟理事・日本優生思想研究所研究員の日野智貴のブログです。いのちに線引きする「優生思想」に断固反対!(記事内容は所属団体の公式見解とは無関係の個人的見解です)

真正平和憲法論<1>『日本国憲法』は講和条約です

日野智貴提案の「真正平和憲法論」シリーズ第一弾です。

真正平和憲法論とは、次の三つを大きな柱とします。

一、『日本国憲法』は憲法典としては無効だが、一種の講和条約としては有効であり、講和条約の効力は憲法典よりも優先されうる。(『日本国憲法』は「実質的意味での憲法」の一部とみなしうる)

二、『大日本帝国憲法』は憲法典としては現存しているが、その規定の一部(例:徴兵制、等)講和条約である『日本国憲法』の規定によって停止されている。

三、『日本国憲法』の「議会制民主主義」「基本的人権の尊重」「平和主義」「国際協調」の四大原則を堅持するため、『大日本帝国憲法』に対して『日本国憲法』の四大原則を盛り込むことを含む改正を行い、時代に即した新しい自主憲法を確立する。

以下に詳しく解説します。


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日本国憲法』は憲法典としては無効

「旧無効論」の誤り

「『日本国憲法』は憲法典としては無効」というと、いわゆる「押し付け憲法論」と誤解されそうですが、そうではありません。

押し付けられたものであっても、適法な手続きを経て『大日本帝国憲法』の改正により『日本国憲法』が成立したのであれば有効です。

「押し付け憲法だから無効」というのは、「旧無効論」に多い主張ですが、後述するように「法実践」の観点からは全くナンセンスです。

そもそも、『日本国憲法』は全くの押し付け憲法ではありません。『日本国憲法』の「民主憲法」「平和憲法」としての役割を評価しているからこそ、「真正平和憲法論」なのです。


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大日本帝国憲法』の改正手続き

大日本帝国憲法』の改正は、帝国憲法第73条の規定によって行われます。

第73条将来此ノ憲法ノ条項ヲ改正スルノ必要アルトキハ勅命ヲ以テ議案ヲ帝国議会ノ議ニ付スヘシ
2 此ノ場合ニ於テ両議院ハ各々其ノ総員三分ノニ以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開クコトヲ得ス出席議員三分ノ二以上ノ多数ヲ得ルニ非サレハ改正ノ議決ヲ為スコトヲ得ス

大日本帝国憲法』改正の発議権は天皇が有しており、それを帝国議会が承認することで『大日本帝国憲法』の改正が成立します。

帝国議会には、天皇の発議案への拒否権は有していますが、修正権は有していません。


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帝国議会による修正は「違憲・無効」

日本国憲法』成立の手続きは、GHQと日本政府との交渉でまとめた天皇の発議案を、帝国議会極東委員会の了承を得たうえで訂正する、という形をとりました。

帝国議会による修正の中には、憲法九条のいわゆる「芦田修正」(自衛隊合憲論の根拠となった憲法九条の修正)や、「普通教育の義務教育化」(中学校までをも無償にした画期的な快挙)と言った重要な部分もありました。

国防や教育も大切なことには変わりありませんが、大切であるからこそ、本来ならば天皇が再発議する手続きを踏む必要がありました。しかし、極東委員会側の都合により、『大日本帝国憲法』第73条の規定に違反する手続きが取られたのです。


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改正できるのは「条項」のみ

もう一度、『大日本帝国憲法』の第73条を引用します。

第73条将来此ノ憲法条項ヲ改正スルノ必要アルトキハ勅命ヲ以テ議案ヲ帝国議会ノ議ニ付スヘシ
2 此ノ場合ニ於テ両議院ハ各々其ノ総員三分ノニ以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開クコトヲ得ス出席議員三分ノ二以上ノ多数ヲ得ルニ非サレハ改正ノ議決ヲ為スコトヲ得ス

大日本帝国憲法』で改正できるのは条項のみであり、表題を『日本国憲法』に変えたり、本来『皇室典範』をも憲法典とする二元憲法制であったにもかかわらず『皇室典範』を法律に降格して一元憲法制にするようなことは、できないのです。

これは憲法改正限界説に立つわけではなく、明文化された憲法改正禁止条項は守らなければならない、という意味です。本来ならば、憲法改正の限界を超えることを「革命」と呼ぶのですが、憲法改正制限条項への違反は憲法の改正としては無効です。


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それでは『日本国憲法』はなんなのか?

日本国憲法』は革命憲法?

成立の手続きの不備があっても、別の根拠によってその規範の存在を有効とすることができます。これを「無効規範の転換」といい、特に『日本国憲法』の全部または一部がーー憲法を無視する政府があるので「全部」とはいいきれませんけど――68年以上も実効力を有しているのですから、これを完全に無効とする「旧無効論」は、法実践をまったく無視しきった空論となります。

そこで、多くの学者が支持するのが「八月革命説」です。これは、『ポツダム宣言』の受諾により『大日本帝国憲法』の効力の一部が停止されたため、その成立の手続きに多少の不備があっても『ポツダム宣言』によって確立した国民主権原理によって『日本国憲法』は有効である、というものです。

憲法には、「根本規範部分(憲法の根本原理を明文化したもの)」「憲法保障部分(憲法改正・国家緊急権・抵抗権の規定)」「通常規定部分」の三つが存在し、その中で「根本規範部分」がもっとも重要であるとされていますが、その「根本規範部分」は、既に『ポツダム宣言』の受託によって失効した、とするのです。

しかし、日本政府はドイツ政府とは違い、軍隊については無条件降伏しましたが、国家としては「国体の保障」を条件に降伏しました。憲法学上は、「国体」とは「根本規範」を表します。

したがって、八学革命説は支持できません。


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天皇主権論による有効論は危険な論理

他に、「最終的に天皇陛下が公布されたのだから有効じゃないか」という主張がありますが、これは超憲法的な天皇主権の存在を認める者であり、立憲主義の否定であって危険な主張です。

大日本帝国憲法』では、天皇主権の存在は認められていません。天皇主権論は戦前の軍国主義者が考え出したファシズム体制の論理であり、昭和初期・戦前・戦時中の軍部の独走は憲法学用語でいう「憲法の侵害」(権力者による憲法の無視)にあたります。

天皇の意思よりも憲法が優先されることは、『大日本帝国憲法』第四条に明記されています。

第4条天皇ハ国ノ元首ニシテ統治権ヲ総攬シ此ノ憲法ノ条規ニ依リ之ヲ行フ

陛下と言えども「統治行為論」は適用されません。(※統治行為論立憲主義を破壊する危険な論理です。現在の統治行為論国民主権論に基づいていますが、国民主権原理を悪用して政権を握ったのがナチス・ドイツであることを考えると、天皇主権であれ、国民主権であれ、超憲法的存在としてそれを認めることは立憲主義を破壊するのです。)


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日本国憲法』は講和条約として有効

講和条約に転換できる理由

日本国憲法』は、『大日本帝国憲法』第73条の規定に基づくと無効ですが、第13条の講和大権の規定に基づくと有効である、というのが「講和条約説」(新無効論)です。

 

第13条天皇ハ戦ヲ宣シ和ヲ講シ及諸般ノ条約ヲ締結ス

 

実際に、『日本国憲法』は、反ファシズム大戦としての性格を持つ第二次世界大戦の結果として設置された極東委員会の了承のもとに成立したのですから、講和大権の発動ということは十分に可能です。

ここで言う講和条約とは、戦争における講和大権の発動としてのあらゆる合意を指すのであり、『日中共同声明』や『ポツダム宣言』のような条約の形を取っていないものも講和条約には含まれます。


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講和条約の規定は憲法典よりも優先されうる

この「講和大権」は、憲法の「国家緊急権」に関する条項であり、「憲法保障部分」に含まれます。したがって、その規定は主に平時を想定した「通常規定部分」よりも優先されうることがあります。(但し、根本規範部分を超えるものではありません)

事実、『ポツダム宣言』に基づいてGHQが出した指令には、憲法に違反する部分もありますが、それについては「憲法外において有効である」とする最高裁判決が確定しています。

したがって,『日本国憲法』は『大日本帝国憲法』に違反する部分もある講和条約であり、実質的に憲法と同じ効力を有していると言えます。

 


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講和条約説」が法的安定性の観点からも優れていることや、具体的な解釈については、次回以降述べます。