すべての「いのち」のために

日本SRGM連盟代表・日本アニマルライツ連盟理事・日本優生思想研究所研究員の日野智貴のブログです。いのちに線引きする「優生思想」に断固反対!(記事内容は所属団体の公式見解とは無関係の個人的見解です)

気候変動・海洋汚染を招く生命軽視・経済優先の唯物論文明から訣別しよう

 今日はとても暑かったのですが、最高気温が37度や38度の地域もあったそうです。

 ここ最近は晴れが続くそうなので、ますます熱くなりそうですね。

 一方では先日の集中豪雨で多くの方が亡くなりました。

 明らかに異常気象が続いてきます。気候変動は確実に起きているのです。

 広島や岡山の方ではいまだに復旧できていない地域もあるそうです。被災地の一刻も早い復興と犠牲者のご冥福を祈らせていただきます。

 ところで、今回の豪雨を巡って「災害の中自民党議員が宴会を開いていた」「立憲民主党の議員だって飲み会を開いていたではないか」という議論が与野党の間でなされていますが、そういう重箱の隅を突くような議論ばかりしているから自民党は未だに平成21年(西暦2009年、皇暦2679年)の総選挙の時よりも少ない票しか取れないし、立憲民主党もそのような自民党にすら勝てないのです。

 そんなことよりももっと本質的な議論をすべきです。

 自然災害を単なる天災と思っている方もいるかもしれませんが、それは違います。

 現在の異常気象は明らかに気候変動によるものであり、これは私たちに文明のあり方を問うものなのです。

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 今日、宝蔵神社に行ってきました。

 宝蔵神社の前の道路は豪雨の痕で通行禁止になっていました。これを見て私は「生命軽視・経済優先の唯物論文明から脱却しなければならない」との思いを新たにしました。

 宝蔵神社と言えば「全国流産児無縁霊供養塔」があることでも知られます。無縁霊の水子さんまで供養した例は宝蔵神社が初めてと言われています。

 私もここの研修生だった頃に全国流産児無縁霊供養塔の前でよく『天使の言葉』や『観世音菩薩讃歌』を奉げていました。

 今回の豪雨のような大規模な水害は堕胎で殺された水子さんの哀しみの念が反映されている、という話もあります。

 そうしたスピリチュアルな話は信じないという方もいらっしゃられるでしょうし、それはそれで良いのですが、ただそういう方にも今の政治のあり方を象徴する話として聞いていただきことがあります。

 今の日本では戦後の一時期と比べて堕胎の数こそは減っていますが、『優生保護法』に対する政府の対応を見ても、今の日本政府は「生命尊重」ではなく「生命軽視」の立場に立つことは明白です。

 『優生保護法』というのは障碍者ハンセン病患者、遺伝的な疾患を持たれている方がこの世に誕生することを「防止」することを目的に制定された法律で、経済的理由による堕胎を広範囲で認めた(一方で生活困窮者に対する育児支援の規定はありません)ほか、障碍者等に保健所の判断で「強制堕胎」や「強制断種」を命ずることができるなど、「人権侵害」「生命軽視」の手本のような法律でした。

 この恥ずべき法律は何と、平成8年(西暦1996年、皇暦2656年)まで存続していました。私が生まれる前の年です。言い換えると現在21歳の私よりも年長の方はみんなこの法律の時代を生きていたわけですから、決してはるか昔の話ではありません。

 現在ではこの法律は『母体保護法』に改称され、優生思想(人間の生命を「優生」なものと「劣生」なものにわけ、「優生」な形質を持った人間が増え「劣生」な形質を持った人間が減ることが社会のためであるという思想)に基づく規定は削除されましたが、決して政府は優生思想のマチガイを認めたわけではありません。

 この『優生保護法』により9歳の女の子が強制的に不妊手術をさせた例もありますが、政府は「当時は合法な行為であった」として責任を認めていないので裁判沙汰になっています。

 また『母体保護法』が経済的理由での堕胎を認めていることについても、決して「母体保護」や「女性の人権」を目的にしたものではありません。

 その証拠に倫理的理由(強姦妊娠等の事情がある場合)での堕胎に制限があるなど、むしろ「女性の人権」を基準に考えると堕胎についての基準がチグハグです。

 アメリカでは「プライバシーの権利」の拡大解釈で堕胎が女性の権利として認められましたが、それは当時のアメリカの『刑法』の規定が強姦妊娠の場合の堕胎であっても禁止する内容であり、それが連邦最高裁の判断によって違憲とされたのです。

 一方でアメリカ連邦最高裁は、胎児の生命や母体の安全を守る観点から堕胎に一定の規制を定めることについては合憲との判断を下しています。この問題については様々な意見がありますが、一応筋の通った考えではあります。

 しかし我が国では専ら医療利権複合体による「生命軽視」「利権確保」のために、旧『優生保護法』が『母体保護法』として存続したのです。

 医師会は今世紀に入ってからも「胎児条項」(障碍のある胎児を殺しても良いとする条項)の導入を主張しています。医療利権複合体の間ではまだ優生思想が健在なのです。

 さすがに今の政治家は公然とは優生思想を掲げはしませんが、医療利権複合体は日本の政治に大きな影響力を持っています。

 例えば、子宮頸がんワクチンはインフルエンザワクチン以上に副反応の可能性が高い、という調査結果があったにもかかわらず(インフルエンザワクチンは過去に副反応が多いことを理由に強制接種の対象から外され任意接種となりました)自民党から共産党までのほぼすべての政党の賛成(生活の党(現・自由党)の一部のみ反対)によって定期接種に指定されました。

 このように強力な影響力を持っている医療利権複合体のため、政府は全く堕胎防止のための政策を打ち出していません。

 私は別に「堕胎に殺人罪を適用しろ」みたいな乱暴な議論をする気はありません。(もっとも一部のフェミニストの言う「堕胎罪を廃止しろ」みたいな主張も乱暴な議論だと思いますが。)

 堕胎の件数は減少傾向にあるとはいえ、今でも年間10万件は超えています。闇中絶を含むともっと多いという意見もあります。

 そうした何十万人もの赤ちゃんの命を救うために政府ができることはたくさんあります。

 経済的理由で堕胎が行われているのであれば、政府は貧困解消のための努力をすべきです。

 また最近は出生前診断でお腹の中の赤ちゃんに障碍があることがわかると堕胎するケースも多いようです。

 このようなケースについては障碍者でも幸福に暮らせる社会を築くことが必要です。

 「反出生主義」(アンチナタリズム)と言って「人生は苦しいから生まれる前に堕胎をする方が苦痛がなくても良い」という主張をする人もいますが、そもそも「生れて来ることが苦痛」と言われるような社会を放置しているのは政治の責任です。政府はそのような社会を改める義務があります。

 こういうと「綺麗事はいくらでも言えるが、現実問題として予算がない」等という人がいますが、例えば貧困の問題では私の主張する「政府紙幣発行による国民配当(いわゆるベーシックインカムの導入」という手もあります。予算はいくらでも講ずることができるのです。

 政府紙幣の発行に反対する意見も根強いですが、そもそも現在の我が国は年間百兆円近い予算を組んでいます。政府が1%でも節約すれば1兆円の財源が生まれるのです。「財源がない」というのは言い訳にすぎません。

 今の日本では「堕胎を罰せよ」という人達や「中絶は女性の権利」という人達によって両極端な乱暴な議論が展開されていますが、私はそもそも堕胎は当事者だけでなく社会全体の問題であると考えていますから、どちらの主張についても「一理はあるが、一理しかない」と考えています。

 生命に関する話は社会全体の課題です。これは堕胎に限りません。自殺の問題もそうです。

 年間10万件以上の堕胎、年間3万件近い自殺、これらの責任を当事者だけに負わせるのではなく、社会全体の課題と考えてこそ、生命尊重の世の中を実現できるのです。

 気候変動の話から生命倫理の話に逸れましたが、あえてこの問題に回り道したのは本質的な問題は一緒だからです。

 そもそも我が国で堕胎が容認されたのは、医療利権複合体の人たちが優生思想という特殊な思想に染まっていたというのもありますが、それだけでなく戦後の混乱期に「これ以上人口が増えると国民を養え切れないから、人口を抑制しなければならない」と政府が考え、堕胎を推奨したという経緯もあります。

 その結果が今の急激な少子高齢化な訳で、政府が人間の人口という本来自然の摂理で決まるべきことに干渉した結果、我が国はエライことになっているわけですが、これは要するに「生命軽視・経済優先」の観点から政府が行動した結果、却って悪い結果を生んだという例です。

 気候変動でも同じ例があります。

「環境破壊や食糧危機の原因の一つが人口爆発である。だから途上国での人口を抑制するべきだ。」

として国連人口基金は途上国での人口抑制を推奨していますが、そんなことをすると後数十年も経つと多くの途上国が急激な少子高齢化で苦しむでしょう。

 というよりも、中国もかつてその考えに立って「一人っ子政策」を導入し日本の『優生保護法』も参考にして強制堕胎等も含めた人口抑制を推進した結果、様々な社会問題が生まれています。

 今生きている我々が経済優先のライフスタイルを改めるのが先決であり、我々が経済優先のライフスタイルを維持するために次世代の命に「産まれて来るな」というのは筋が違います。

 また気候変動の原因となっている温室効果ガスの51%が家畜産業関連です。動物の生命を軽視する経済効率優先の家畜産業が気候変動を招いているのです。

 食糧危機の原因の一つが頻発する異常気象であり、その背景に気候変動があることは言うまでもありませんが、忘れてはならないのは現在世界で生産されている穀物の3分の1が家畜の飼料になっている、という事実です。

 実は現在ある農地を有効に活用しすべてを人間の食料とすれば、人口が百億人を超えても充分養っていける計算になります。

 生命軽視・経済優先の唯物論文明が気候変動を招き、回りまわって人類を苦しめているのです。

 環境問題といえば気候変動だけではありません。海洋汚染もあります。

 現在問題になっているのはプラスチックゴミによる海洋汚染です。

プラスチック危機 微小粒子、サンゴ白化の引き金

毎日新聞2018年7月15日 23時21分(最終更新 7月16日 16時19分)

 プラスチックごみが砕けるなどしてできる微小粒子「マイクロプラスチック(MP)」がサンゴと褐虫藻(かっちゅうそう)の共生関係を阻害するという研究結果を、大久保奈弥(なみ)・東京経済大准教授(サンゴ生物学)らの研究チームが海洋汚染の専門誌「マリン・ポリューション・ブレティン」に発表した。実験でMPがサンゴと褐虫藻の共生に影響することが分かったのは初めてだという。

 褐虫藻植物プランクトン。サンゴは体内に褐虫藻をすまわせて光合成による栄養をもらう一方、褐虫藻の養分となる老廃物を渡しており、両者は共生関係にある。褐虫藻と共生できないと、サンゴは「白化」現象を起こし、死滅することもある。MPは大きさが5ミリ以下の微小なプラスチックの総称で、地球規模での海洋汚染が問題になっている。チームは「世界中のサンゴの生存や生育に害を及ぼす恐れがある」と警鐘を鳴らしている。

 チームは、シナキクメイシというサンゴの幼体(体長0.3ミリ)21匹に、直径0.003ミリの粒状のMPのモデルとなるビーズを混ぜた餌を与えた。体内にビーズが蓄積されたのを確認後、水槽に褐虫藻を放ったところ、共生できたのは1日後で5匹、2日後でも10匹にとどまった。ビーズ入りの餌を食べさせなかった幼体は、全ての個体で褐虫藻を入れた直後から共生がみられた。

 ビーズは食物連鎖を通してサンゴに蓄積されることも分かり、新たに取り込まなければ徐々に排出されるものの、小さいMPほど体内にとどまりやすかったという。大久保准教授は「サンゴの体内の褐虫藻がすむ場所がMPに取られてしまったと考えられる。周囲にMPがあれば、白化から回復しにくくなる可能性がある」と話す。【荒木涼子】

 サンゴ礁の白化は海洋の生態系を破壊します。すると当然人類にも影響が出ます。

 またサンゴ礁二酸化炭素を吸収する役割もあるので、気候変動も加速します。(もっとも気候変動の主要な原因は二酸化炭素ではありませんが、この問題は別述します。)

 今年6月のG7シャルルボワ・サミットではこのようなプラスチックゴミによる海洋汚染を阻止するために『海洋プラスチック憲章』というものがまとめられました。

 ところが、なんと日本とアメリカの二国がこの憲章に反対しました。

 アメリカのトランプ政権は元から環境問題に消極的ですが、海洋国家である日本がこの憲章に反対したのは異常です。目先の経済的利益のために海洋汚染を放置していると長期的には日本の国益を損ねます。

 そもそも人類社会は自然界から独立して存在するものではありません。

 環境問題に消極的な政治で本当に良いのでしょうか?

 自然界から奪うことにより文明が発達すると言うのは、家族の財産を盗むことにより金持ちになろうと言う考えと同じです。

 政治はそのような「生命軽視・経済優先の唯物論文明」から訣別して、「あらゆる生命を尊重する自然に調和した家族国家共同体」の実現へと舵を切る必要があります。

 このような議論が出来ていない今の政治家は与野党を問わず許容できるものではありません。