すべての「いのち」のために

日本SRGM連盟代表・日本アニマルライツ連盟理事・日本優生思想研究所研究員の日野智貴のブログです。いのちに線引きする「優生思想」に断固反対!(記事内容は所属団体の公式見解とは無関係の個人的見解です)

宗教者の日中協力は必要だ


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 本日、宗教関係の専門誌『宗教問題』の第22号が贈呈されました。感謝申し上げます。

 習近平国家主席率いる中国共産党政権による宗教弾圧が特集でした。

 興味深かったのは世界ウイグル会議のドルクン・エイサ総裁へのインタビューです。

 ドルクン総裁は今の中国でのイスラム教への弾圧は文化大革命の頃よりも酷い、と述べています。文化大革命紅衛兵の暴走の結果として起きたものですが、今は中国政府が公式に堂々と「合法的に」宗教弾圧を行っている、と言うのです。

 イスラム教を子供たちに教えたり、イスラムの信仰を頑なに守ろうとすると「再教育センター」という所に入れられ、「神はいない」というような内容の自己批判を強要されるといいます。

 宗教弾圧は怖ろしいことです。日本でも宗教に否定的な人は少なくありませんが、彼らが国策として「神はいない」と言う価値観を国民に強要すると怖ろしいことになります。

 一方でドルクン総裁はアルカイダやダーイッシュと言ったイスラム原理主義過激派によるテロ行為に否定的です。イスラムの教えに反するのみならず、イスラム教の信仰を弾圧する口実を与えているからです。

 ウイグルは本来東トルキスタンと言う独立国ですが、これについてチベットも本来独立国ではあるものの、チベット政府は「高度な自治」を認めるのであれば中国とも交渉するとしています。

 これについてドルクン総裁は中国側が「高度な自治」を「門前払い」している現状を挙げて「われわれウイグル人チベットと同じ要求をして何か意味があるのか」と述べています。私もこれについては同感です。


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 このように参考になる興味深い記事が多かった『宗教問題』誌ですが、一方で気になる内容のものもありました。

 江藤ゆかり氏の「「宗教協力」の名を借りた立正佼成会"対中従属"の真実」と言う文章です。

 江藤氏は立正佼成会新宗連の「宗教協力」について「その"協力"の輪に入れてもらえない高名な宗教者がいる。チベット仏教の指導者、ダライ・ラマ14世だ。」と書いてあります。

 しかし、私は立正佼成会チベット仏教を「宗教協力」の輪には含めない、という声明を出したことは聴いたことがありませんし、新宗連チベット仏教を排除しているという話も聴いたことがありません。

 一例を挙げると平成26年(西暦2014年、皇暦2676年)1月1日の新宗連新聞には「ダライ・ラマ 若手宗教者と対話」という記事があります。この記事ではダライ・ラマ猊下はむしろ好意的に取り上げられています。

 この江藤氏の記事を読んだ私の正直な感想は「生長の家への批判に似ているな」というものでした。

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 生長の家立正佼成会自民党と距離を置いて以来、恰も中国に迎合しているかのような印象操作がなされているからです。そしてその内容の多くは根拠のないっレッテル貼りで会ったりします。


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 立正佼成会生長の家同様、初代会長が亡くなってから「左傾化」批判がされています。

 ですがこの江藤氏の記事で注目すべきは「庭野日敬初代会長の頃から中国に従属していた」とでも言うべき匂いが感じられることです。江藤氏が如何に庭野日敬先生を否定的に見ているか、は記事の随所に表れています。

「しかしなぜ立正佼成会やWCRPは、そこまで中国共産党に気をつかうのか。それは彼らの"日中交流"そのものが、共産党との付き合いから始まったことに起因する。」

「佼成会の庭野日敬開祖(一九〇六~九九)が、日中友好協会、中国仏教界の招きで中国へ訪問したことが本格的な第一歩となる。」

「中国仏教会は、その名の通り中国の仏教者の連合組織なのだが、全日本仏教会などとは異なり、中国共産党と緊密な関係を持つ事実上の"お役所"である。」

「そんな組織の最高幹部だった趙樸初氏と庭野日敬氏は、なぜか意気投合。」

――という感じで、庭野日敬先生と趙樸初中国仏教会元会長の関係を「これでもか」と言うぐらい書くのですが、これは冷静に読むと「共産党との付き合いから始まった」のではなく「中国仏教会との付き合いから始まった」と言うのが正確です。

 無論、中国は独裁国家ですから中国仏教会と付き合うと否応なく中国共産党とも付き合わざるを得なくなりますが、それを言い出すと中国でビジネスをしているすべての企業は「共産党との付き合いから始ま」りビジネスをしているのか、という話になってしまいます。

 さらに江藤氏はヴァチカンの影響力の強いWCRP(世界宗教者平和会議)に趙樸初氏が参加したことについてこうも述べています。

「そんなWCRPに、バチカンと対立する中国の代表を参加させた佼成会の手腕は、世界の宗教界を驚かせるのに十分だった。ただ言い換えればこのとき、佼成会は中国に大きな借りをつくってしまった。」

 しかしながらこの文章は意味不明です。庭野日敬先生の尽力によって趙樸初氏がWCRPに参加出来たのであれば、借りをつくったのはむしろ中国の方です。

 この江藤氏の文章は明らかにオカシイのです。


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 そして続く江藤氏の文章は明らかに悪意のこもった文章です。

「そして同時にそのとき、庭野日敬氏の頭の中には、中国共産党から迫害されるチベット仏教、およびダライ・ラマ十四世の存在など片隅になかっただろう。」

 これは江藤氏が勝手にそう想像しているだけです。その上、江藤氏はこうも述べます。

「かくして立正佼成会(=WCRP)は、中国の懐に完全に飛び込んでしまった。」

 そもそも直前に「WCRPはバチカンの影響力が強い組織だ」と書いているにもかかわらず「立正佼成会=WCRP」と書く神経が理解できません。江藤氏の書いていることは明らかに矛盾しています。

 この「中国の懐に完全に飛び込ん」だという書き方も正直、ネトウヨがブログに書いている妄想記事を連想しました。

 またこんなことも書いています。

「彼らの無視するダライ・ラマ十四世が、「世界平和やチベット宗教・文化の普及に対する貢献」を理由に一九八九年、"本物の"ノーベル平和賞を受賞したことはご存知なのだろうか。」

 ここでわざわざ「本物の」と記したのは、庭野日敬先生が「宗教界のノーベル賞」といわれる「テンプルトン賞」を受賞したことに対する嫌味でしょう。

 しかし、立正佼成会は決してダライ・ラマ十四世猊下の存在を無視していません。一例を挙げると立正学園の公式HPには次のように記されています。

ダライ・ラマは、中国から弾圧されて、インドに亡命されています。チベット人を救うために努力されており、ノーベル平和賞を受賞されました。」

 これは立正学園での中学一年生の生徒への講話の内容らしいですが、中学生の生徒相手にもダライ・ラマ十四世猊下のことを教えているのです。それのどこが「ダライ・ラマを無視」なのでしょうか?


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 江藤ゆかり氏の文章から感じるのは次のメッセージです。

中国共産党に支配された中国の宗教界と付き合うとはけしからん。」

 それ以外、江藤氏の文章の解釈は出来ません。

 確かに中国による宗教弾圧は許されないことです。しかし、だからといって日中間の宗教交流をも否定すべきでしょうか?

 私も政治活動をしていますから今の中国の体制を変革すべきであると考えています。ですが、一人の信仰者としては「中国の宗教者とも交流したい」と考えています。

 私は、権力者に迎合したり妥協したりしている宗教者を責める気にはなれません。

 そもそもそういう状況を是正したいのであれば政治の力によってしか解決は出来ません。

 中国共産党による弾圧を受けている宗教者が反政府運動に身を投じるのであればそれは素晴らしいことです。あるいは、中国の侵略を受けてダライ・ラマ十四世猊下のように祖国光復のために力を尽くす宗教者が素晴らしいことは言うまでもありません。

 だからといって、宗教者が「中国共産党関係者とは一切交流しません」と言うのではあまりにも異常な話でしょう。

 宗教者は権力を持っていません。権力なき民衆が理想通りの行動をできないことは当然です。むしろ日中の宗教者が交流を行っていると、今の中国の体制が崩壊した後に日中間で良好な関係を築く布石になるかもしれないのです。

 少なくとも、今回の江藤氏の文章を読んでも「対中従属」というのは残念ながら単なるレッテル貼りにしか思えませんでした。もう少し客観的に書いて下されればよかったのに、と思います。


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